Posted on 2021.10.02
BLUE ZONE LIFE LESSON
健やかに、生きがいを持ち長寿を喜び讃える人々が暮らす世界5つのゾーン、“BLUE ZONE”。
このページでは、“BLUE ZONE”のスピリッツを彷彿とさせる
県内外、国内外のFOODに関わるステキな出会いを綴ります。
TAJARIN AL TARTUFO (タヤリン・アル・タルトゥフォ)
皿の上の十五夜
色取月になると食べたくなる一品がある、それは神々しくも香る高貴なイタリアの食の女王、白トリュフが惜しみなく使われた北イタリア・ピエモンテ地域の郷土料理Tajarin al Tartufo (タヤリン・アル・タルトゥフォ)。ピエモンテの三種の神器とも言える、白トリュフ、ピエモンテ・バター、地域特有の卵パスタ、tajari(タヤリン)が絶妙にマリアージュされた、秋の最高傑作。ピエモンテ地域はワインの産地、バローロが有名だが、それだけではなく、世界三大珍味の一つである白トリュフを筆頭に、ピエモンテの農産物は多くの料理人やガストロノミストの胃袋を鷲掴みにしている。
秋さる夕方、ピエモンテの丘をドライブすると、夏は青々としていたワイナリーの葡萄の葉が琥珀色に染まり、新涼を伝える。そんな時期ピエモンテの村々では、秋の収穫祭が石畳の広場などで開催され、レストランがご自慢のTajarin al Tartufoを看板メニューに掲げる。
タヤリンは卵黄を多く含むご当地パスタで、1キロあたりの小麦に対して40個の卵黄を使う場合もある。見た目はヒヤムギのように細く、かみごたえがあり、沖縄そばの手打ち平打ち麺に似たような食感に近いかもしれない。沖縄同様、イタリアのパスタ(麺)も地域によって特徴があり600種類以上もあるという。
Tajarin al Tartufoは、私にとっては美味しさだけではなく、一緒に住んでいた学友との思い出が詰まっている。大学院の論文テーマを「タヤリンパスタの種類とレシピ」にした学友のフランは3ヶ月以上、地域のおばさん、レストランなどへ足を運び、聞き取り調査、夜にはレシピを再現し、私たちルームメイトに振る舞っていた。彼女が収集した多種多様なタヤリン料理は、酪農地域でもあることから贅沢にピエモンテ・バターを使うレシピがあり、様々な季節に変化するバターの味覚も楽しませてもらった事も思い出す。
そんな彼女と論文を提出し終えた祝いとしてTajarin al Tartufoを食べに、知る人ぞ知るトラットリアへ人里離れた山内まで向かった。玄関先に黄落し地面に広がった葉がバターの様に見え、「美味しいはず!」と心躍せながら、2人で戸を開けた。昔は納屋だった石造の店内は地元の人達で埋め尽くされ、メニューは一つ、トリュフが豪盛に降りかけられたTajarin al Tartufo。それをフランと口いっぱいに頬張り、人々を虜にしてきた白トリュフの鼻から抜けるセクシーなアロマを堪能し、「媚薬」と言われることを実感し、大人になった。
Tajarin al Tartufoは秋恋の様なもの。
年に一度、トリュフを口に含み、十五夜の月を皿の上に、悦に入ることも風雅かもしれない。
[材料 2人分]
①生トリュフ 30g ②タヤリン(パスタ) 250g ③バター100g(イタリアン無塩バターを使用) ④パルメジャーノレジャーノ 適量 ⑤塩 小さじ2、少々
[作り方]
1. たっぷりの湯に塩小さじ2を入れ、タヤリンを5分間茹でる(パッケージに記載の茹で時間)。
2. タヤリンを茹でながら、手早くソースを作る。フライパンを低温にし、焦がさないようバターを溶かす。
3. スライスしたトリュフを加える。トリュフは仕上げ用に適量をスライスせず残す。塩を少々ふる。
4. 茹で上がったパスタを水切りし、バターソースの中へ入れ、混ぜ合わせる。
5. お皿に盛り、仕上げのトリュフを皿の上でスライスし飾る。最後にパルメジャーノレジャーノをお好みでおろす。
*イタリアンバターがお勧め。あっさりとした爽やかさがある
*今回は無塩バターを使用したが、有塩の際は、ソースの塩を少なめに
*トリュフスライサーは家庭用のスライサーで代用可能
*調理に使用しているのは黒トリュフ
イタリア産デュラム小麦のセモリナ粉にたっぷりの新鮮な卵を練り込んだ細平麺パスタ。
エッグタジャリン 250g ¥864
BREZZO/イタリア
トリュフの中で最も香りが高く高級な白トリュフ。秋から冬にかけての3か月間しか収穫できないため非常に希少価値が高い。
生の白トリュフ (10月中旬入荷予定)
SOLLEONE/イタリア
トリュフスライサー ¥8,000
SOLLEONE/イタリア
創業230年を超える老舗メーカー「ブラッツァーレ」。厳選したミルクを、24時間以内に仕上げたフレッシュなプレミアムバター。
無塩バター 250g ¥3,300
BRAZZALE/イタリア
そのほか、トリュフを手軽に食卓で楽しめるアイテムを。
フリーズドライ白トリュフ入り。ひとつまみで大人の味わい。サラダに、フライドポテトに。
白トリュフソルト 30g ¥1,706
TARTUFLANGHE/イタリア
魚や肉のソテーなどの仕上げに。また、卵かけご飯にひとふりすると絶品。
トリュフ フレーバード エキストラ・ヴァージン オリーブオイル
100mL ¥702
CIBOTTA/イタリア
ガストロノミスト(農食文化・環境社会学研究家)
伊江 玲美
1976年東京生まれ、ルーツは沖縄、幼少期をアメリカで過ごす。2005年にスタンフォード大学にて持続可能な発展途上地域開発と起業論を研究。帰国後、一次産業と食文化を統合したコンサルティング会社を起業。2012年にブータン王国のGNH Center(国民幸福度を考えるセンター)の日本大使に任命される。2015年、イタリア食科学大学にて修士号を取得し、Slow Food 国際本部アジア局日本ディレクターに就任。活動は日本の食文化、食の叡智の発信、農業・漁業継承の促進、また恩納村を中心にフードロス食材を活用した無料弁当を子供達へ提供。