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la souvenir

Posted on 2025.01.28

異なる眼

最高気温1度、そんな日が数日続いた。
それでもお日様がご機嫌なおかげで、快適に動けた。
慣れた旅先ながら、毎度緊張の渦の中、好天に恵まれるだけで幸せに思う。
航空運賃や宿泊費の高騰は天井知らずで、出張予算もギュッとなる。
そんな中、久しぶりに複数人で出かけた。
運よくスタッフの一人はフランス出身、実家に泊まることで宿泊費ギュッ。
女子三人はアパートメントホテルの一室へ。
小さなキッチンで湯を沸かし、最寄りのパン屋で朝ごはん調達、
夜もあったかなアジア料理で暖をとって倹約を兼ねる。
ギュッとなるほど知恵が出て、貧乏性な日本人丸出しの滞在。
それでもパリの街に溢れる「かわいい!」にはしゃぎ
「カッコいい!」に拍手が止まらない。
出会った人との会話、見つけたモノとの感動、
これから伝えるべき感想をベチャラベチャラと話し合い
夜はあっという間に朝を迎える。
限りなく愛おしいギュッギュッのトレーニングタイムである。
     
女子三人のうち一人は、今回が初のバイイングデビューとなった。
心なしかわたしは彼女のリアクションを見るのが楽しみだった。
映像の仕事で世界66カ国を旅した経験のある彼女がパリで何を見るのだろう。
ロージャースで勤めはじめ、本誌のコピーライティングなども手がける彼女が
何を感じるのだろう。
予想通りディナーの席にて。
フランス語の響きってとてもセクシーですよね、なんとも色っぽい、
ずっと気になっていたのですが、これってファルセットですよね!!
騒ぐ彼女は急に裏声で話し始め、
一瞬キョトンとしたわたしたちも共にファルセット、
大笑いしながらも気分はパリのマダム、
あらこれで彼氏でも見つかるかしら!と大騒ぎ。


続いてボンマルシェにて。さらりと店内に入り、ぐるりと一回り。
まるで定点観測のように動く私たちの後ろで立ち止まる彼女。
すごくないですか!
ロージャースにあるブランドが、ルイヴィトンの近くに陳列されていましたよ!
またしてもキョトンとするわたしたちを置いて、写真を撮りに行きます!と店内へ。
あらためて旅はどうでしたか?と尋ねると
取引先の誰もが、まるで家族のように温かく我々を迎えてくれたことに感動。
日本では見ることのない色合いの美しさに感動。
そしてさらに、彼女の感動は丁寧に文章で送られてきた。
「ギャラリーヴィヴィアンヌや古い国立図書館(リシュリュー館)のガラスの天井を
見た時、ヨーローパの人々は煌めきのDNAを持っているから、あの色彩感覚が生まれているんだ。
この歴史がまとう空気感を持って帰りたいと思いました。」
     
フランス出身のスタッフは実家に帰り、
家族との団欒の合間に幼友達と何度か飲んだ様子。
日本とフランスの違い、良さ悪さが彼なりにわかってきて、
僕の中に日本人が育ってきた、とユニークな表現。
ちょっと戸惑いながら語る一方で、仕事の場面をスムーズに導いてくれた。
フランスにおける日本人気は絶大だから、
取引先の皆が日本に住み働く彼を英雄のように讃える。
     
チケットを間違えて一人残った最後のパリの夜。
幸運なことに、パリのスタジオで編集に取り組む映画監督の河瀬さんとテーブルを共にした。
日本人シェフが腕を奮う彼女お馴染みの小さなビストロで、
和気藹々と隣同士でワインを交わし、挙句の果て、
河瀬さんがわたしのことをプラザハウスのことをお客様に語る、豪華すぎる経験。
異なる場所、
異なる眼、
異なるアプローチは多面に広がり、
新しい価値を創造する模様。