Posted on 2025.03.03
10年ひと昔。
アイフォンに記録された写真は簡単に月日を遡り、
当時の様子を映し出す。
そうかあ、あれから10年、
全ては思い出に変わる。
想像を絶するほど大きな商業施設が誕生する。
何もかも充足され、生活はとても便利で豊かになる。
ライカムという名が日本中に広がり
広大な場所が活性化され、人が集まり、
賑やかで、華やかな街として成長する。
いいことだ、きっと成功する。
交差点を挟んで論じられる街の明暗、
戦々恐々だった。
どうするの?どうしてくれるの?
何するの?何してくれるの?大丈夫なの?
こちら側を見る目の全てが、厳しく、冷たく写った。
きっと呑み込まれてしまう。
毎日がちょっとした針のむしろ。
一分一秒ごとに不安に襲われる。
逃れるように激しく動いた。
考えることをやめてただひたすら動いた。
なるべく違う人と出会えるように、
できるだけ新しい仕事に取り組むようにした。
激しく外国へ出かけ、たくさん見て食べて飲んだ。
波長のあう場面を見つけ束の間の平穏を探る。
やさしさ触れると心底嬉しく意気揚々、
応援メッセージなどいただいたら
身体中にドーパミンが溢れた。
移り変わりの激しさはあの頃からきっと変わらない。
ただその間に世界中が止まってしまった時間がある。
あの時に生まれたスタンダードが余韻を引きずり価値観をかえた。
逆に、あっというまに元に戻るしたたかな人間の癖も見え隠れする。
人間に宿る生きる力はきっと半端ない。
なんだかんだ笑うことを学び
救われることを知り
仲間と背中をたたきあい
見えないエネルギーにエールを送る。
写真に映し出されているのは
すべからず美しく、楽しそうな場面ばかり。
苦しいとか辛いとか
美しくないものはほとんど記録されていない。
写真を見ながら
実はこの時あの時、こんな大変なことがあったのよ、と話す内容は
正反対の苦労話や失敗談。
なんだか面白い現象だ。
春である。
あったかな風が吹き始め、あらゆるものが芽吹く。
可愛くてたまらない一番末の姪っ子が進学で本土へ行く。
送る寂しさうらはらに、
青春に拍手し、夢に溢れ希望に満ちた10年ひと未来を願う。
季節はいつも貴重でやさしい。